【インタビュー】映画『偏向報道』荻野欣士郎監督が明かす撮影秘話 最終日に起きた意外な出来事

荻野欣士郎監督が手掛けた映画「偏向報道」。

テレビ局の内側で「製造」される偏向報道をテーマにした映画だ。

ショービズノートは荻野欣士郎監督に、作品撮影中のエピソードなどを聞いた。

映画『偏向報道』荻野欣士郎監督にインタビュー

撮影中はいろいろありましたけど、かなり印象に残っているのが最終日の出来事ですね。

最終日の前日に、カメラマンと照明マンがぶつかったんです。

ラストがずっとスタジオのシーンだったんですけど、照明マンは「こういう照明にしたい」と言う。

でも、それをやるには時間がかかるんですよ。

一方でカメラマンは、時間がないから早く撮影に入りたい。

どっちの言い分も分かるんです。

カメラマンは撮り終えることが仕事だし、照明は時間をかけてでもきれいに作るのが仕事なので。

それでぶつかったんですね。

3人で話して、なんとなくまとまりはしたんですけど、完全に解決したわけではなかったんです。

しかも、その日のうちに修正する時間もなかった。

それで翌日、僕はわざと1時間遅刻したんです。

照明マンに電話して、「俺の気持ち分かるな?」って言ったら、「分かりました」と言ってくれて。

その1時間で一生懸命照明を作ってくれました。

カメラマンも、僕がいないと撮影を始められないので、待つしかないですよね。

結果としてちゃんと撮り終えることもできたし、良い方向に行ったと思っています。

もちろん、照明マンがちゃんとやってくれることも、カメラマンがその後の時間で撮り切ってくれることも信頼していたからできたことですけどね。

もう一つ印象に残っているのが、出演者の誠直也さんのアイデアです。

誠さんは昔、『ゴレンジャー』でアカレンジャー役だった方なんですけど、映画の中で新聞がたくさん置かれているところを歩くシーンがあるんです。

その時に誠さんから電話が来て、「ガムテープを用意してきてくれ」と言われたんですね。

何に使うんだろうと思っていたら、新聞をガムテープにつけて、それを足にくっつけて歩くんです。

新聞が亡霊みたいにずっとついてくる感じですね。

最初は途中で新聞が外れる演出だったんです。

でも撮影が終わった後、お正月の3日に誠さんから電話がかかってきて。

いきなり「新聞は外れない」って言うんですよ。

何の話だろうと思ったら、その新聞が最後までついたままの方がいいと言うんですね。

それで最終的には、そのアイデアを使いました。

お正月までずっと考えてくれていたんだなと思いましたけど、突然電話で「新聞は外れない」とだけ言われた時は、正直よく分からなかったですね(笑)。

自分の好みがかなり入っているシーンもあります。

その一つが釣り堀です。

主人公が釣り堀で釣りをしているシーンがあるんですけど、あそこは自分の中ではかなり大事にしていました。

テレビ局を描いた映画なのに、テレビ局の中より釣り堀とか居酒屋のシーンが多いんですよ。

でも、僕はそういう場所で会話する世界観が好きなんです。

あと、同じ方向を向いてしゃべるシーンも入れています。

普通だったら、向かい合って会話することが多いじゃないですか。

でも、僕は舞台っぽくしたかったんです。

舞台って、みんな客席の方を向いてしゃべりますよね。

そうすると、演者同士だけではなくて、観客と演者にも一体感ができると思っていて。

それを映画でもやってみたかったんです。

今回の映画は、社会派っぽさもありますけど、それだけにはしたくなかったんです。

ちゃんとエンターテインメントにしたかった。

だから演出では、とにかく間を作らないことを意識しました。

役者さんには「動きは1.5倍で」とずっと言っていました。

2倍だとやりすぎだけど、1.5倍くらいならいいかなと。

昨日、久しぶりに自分で見たんですけど、「本当に間がない映画だな」と思いました(笑)。

でも、それは狙ってやっています。

日本映画って、間を大事にする作品が多いじゃないですか。

それも良いんですけど、今は映画を倍速で見る人もいる時代ですよね。

だったら、もう少し素早いテンポでもいいんじゃないかと思ったんです。

テレビのディレクターをやっていた時は、3秒くらいでカットを変えることも多かったんです。

ワンカットが長いと、人は飽きると思っていました。

でもYouTubeを見るようになって、その考えが変わったんですね。

面白い動画って、ただずっとしゃべっているだけでも見られるんですよ。

ワンカットでも成立する。

そこで、テレビには「映像を割らなきゃいけない」という幻想があったんじゃないかと思いました。

つまらないものを技術でカバーしようとして、そっちに行きすぎた部分もあったんじゃないかなと。

今は、内容が面白ければ見てもらえると思うんです。

だから今回の映画でも、定点でワンカットの場面を使っています。

その代わり、役者さんの動きや会話のスピードは速くしています。

自分がこれまでテレビや映画をやってきて感じたことを、そのまま映像にしてみた感じですね。

見どころを聞かれることもあるんですけど、僕はあまり決めていないんです。

僕自身はこう思って作ったというものはあります。

でも、映画って好きに見ればいいじゃないですか。

つまらないと思ってもいいし、面白いと思ってもいい。

それは見る人の自由だと思っています。

その人がこれまで何を経験してきたか、何を考えてきたか。

それによって、この映画の感想も変わると思うんです。

だから、見どころというより、皆さん自身の経験がそのまま『偏向報道』の感想になるんじゃないかなと思っています。

脚本・監督:荻野欣士郎
鳥居みゆき
東さや香
大迫一平
時東ぁみ
郷田ほづみ
小野進也
岬千泰
中島健太
大内智裕
中冨杏子
三枝りな
新井花菜
中野祥
誠直也
螢雪次朗
製作:荻野憲之 長谷部恵子 永堀真山 岸晶子
プロデューサー:阿久根裕行
アソシエイトプロデューサー:石川翔一
撮影:神野誉晃
照明:上田雅晴
録音:地福聖二
美術:金勝浩一
編集:石川貴大
音楽:中西ゆういちろう 
テーマ曲:中島卓偉「最後の一人になっても」(For Roots. Co.,Ltd)
製作:偏向報道パートナーズ
制作プロダクション:キネマスタジオ
配給:エクラン

©2026偏向報道パートナーズ2026|日本|カラー|90分映倫|G

公式サイト:henkohodo.com

公式X(監督X):@kinshirou_FD

©2026偏向報道パートナーズ

2026年6月19日(金)より全国順次公開

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